2008年12月8日月曜日

失われる多様性

最近、生物多様性という言葉をよく耳にしますが、
生物多様性というのは、40億年近い進化の歴史を経た様々な生き物が、地球のあちこちにいて、それぞれの暮らしを営み、様々な生態系を形作っていることです。(国立環境研究所の竹中先生)

トラ、アフリカゾウ、クロサイなど多種多様な野生動物が、現在危機的な状況に追いこまれるなど、多様性が失われようとしています。

過去には、氷河期であったり、恐竜の絶滅であったり、大絶滅といえる事象が5回あったそうです。その中で、地球上に発生した生物の90%~99%が絶滅したといわれ、その種(*)の数は、50億種から500億種にものぼると推定されています。

それでも、化石時代(一万年以上前)までは、絶滅する種の数は、平均すると1年あたり100万種につき1種の割合だったそうです。

しかし現在は、より早いスピードで、生物の絶滅が起きていると考えられています。
一例をあげると、生物種の50%~90%が生存するといわれる熱帯雨林(地上の面積の約7%)では、森林の消失に伴い、一日あたり74種もの生物が絶滅しているといわれているのです。(E・O・ウィルソン『生命の多様性』1992年、WWFホームページ参考)

私たちの日常生活をふり返ると、燃料は生物由来のものですし、口にするものは、水と塩以外は、生物そのものであったり、生物を経由して手に入れているように思います。
そのことを忘れて、森林を破壊したり、海を汚染したり、二酸化炭素を大量放出して地球温暖化を進めたりしているのですね。

生物はそれぞれの環境の中で、調和をとりながら営みを続けてきました。
身近なところでは、教材にも使われ、宇宙食としても注目されているカイコは桑の葉があれば育ちます。アゲハチョウは柑橘類の葉を食べ、パンダは笹、コアラはユーカリ、というように、食べるものが重ならないような棲み分けもその例です。

私たちの日常から離れたところで営まれている、多様な生き物の多様な暮らに心を向けてみませんか。

 種(*) 人間:動物界>脊椎動物門>霊長目>ヒト科>Homo属>sapiens) 

2008年12月7日日曜日

ハチ公前で振動力発電

東京都渋谷区は、人が歩くだけで発電する「発電床」の実証実験が始めました。渋谷区ハチ公前広場で、今月5日から25日まで行い、発電効率や耐久性を検証するそうです。

発電床というのは、人が床の上を歩く時に生じる振動を電気エネルギーに変えるもので、振動で発電する圧電素子という部品を内臓しています。

振動エネルギーをどのようにして電気エネルギーに変換するのかについては、電気エネルギーを振動エネルギーに変換するスピーカーの原理を逆に利用したものと考えると分かりやすかもしれませんね。

ハチ公前広場には一辺45センチメートルの正方形に床が計4枚設置されおり、体重60キログラムの人が1秒間に2歩踏むと、1枚当たり最大0.5ワット秒を発電するそうです。

CO2を出さず、私たちの身近なところで、しかも私たちの動きを利用して電気を作ることができるなんて素晴らしいですね。
歩くだけで発電できるのでしたら、「喜んで歩かさせていただきます。」と言いたくなりますね。

機器を開発した音力発電によると、ハチ公前広場全体に床を敷き詰めた場合、1日当たり最大32型液晶テレビ100台を14時間稼動できる電力を生み出すとのこと。

今回発電した電力はイルミネーションの一部に利用されているそうですよ。

2008年12月6日土曜日

暖房時の省エネ(電気カーペト・電気こたつ)

急に冷えてきましたね。

冷え切ったからだを温めたいとき、電気カーペットの上に横になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
音や風もなく、昔に比べると、断熱性も遮音性も良くなり、子ども部屋をはじめどんな部屋でも快適に使えますね。

しかし、遮るものもなく放熱しますので、他の暖房器具に比べると電気代は嵩むようです。
電気カーペットの下にさらに断熱マットを敷いたり、スイッチのこまめなON・OFFで、人のいない部分は温めないようにする工夫も必要ですね。

(財)省エネルギーセンター資料によりますと、
◇室温が20℃のとき、三畳用のカーペットの設定温度を「強」から「中」に下げ、5時間使用した場合
  年間で電気185.97kWhの省エネ、約4090円の節約。
  原油に換算すると46.86L、CO2削減量は76.2kg。

◇電気こたつの温度調節を「強」から「中」に下げ、5時間使用した場合
  年間で電気48.95kWhの省エネ、約1080円の節約。
  原油に換算すると12.34L、CO2削減量は20.1kg。
になるそうです。

「冬はこたつでしょ!」とおっしゃる方も多いと思います。遠赤外線という言葉を聞くと、身体の芯までじんわりと温かくなるような気がしますね。

電気こたつをお使いの方、是非、こたつ布団には、上掛けと敷布団も併用してくださいね。それだけでもずいぶん省エネになります。

また、こたつに入っていると、腰から下は温かくなりますが、上半身は寒くなりがちですね。カーディガンなどを1枚多めに重ね着してみてください。体感温度が2℃ほどアップしますよ!!

暖房時の省エネ(エアコン・ファンヒーター)

紅葉が美しいですね。
地球温暖化でしょうか、紅葉の時期の徐々に遅くなってきているようですね。
とはいえ12月、暖房器具をお使いのお家も多いのではないでしょうか?

外気温が6℃のとき、設定温度を21℃から20℃に1℃下げて、9時間使用した場合
2.2kWhのエアコンでは
 年間で53.08kWhの省エネ、約1170円の節約になります。
 原油に換算すると13.38L、CO2削減量は21.8kgになります。
ガスファンヒーターンでは、
 年間で8.15m3の省エネ、約1220円の節約になります。
 原油に換算すると9.70L、CO2削減量は19.0kgになります。
石油ファンヒーターンでは、
 年間で10.22Lの省エネ、約820円の節約になります。
 原油に換算すると9.68L、CO2削減量は25.4kgになります。
                以上参考:(財)省エネルギーセンター資料

CO2-1kgの体積は、1Lペットボトルにすると約509本分になります。私たちはたくさんのCO2を空中に放っているのですね。

扇風機で温まった室内の空気を循環させるのも効果的ですよ。扇風機は夏も冬も大活躍の省エネグッズです。

また、皆さんは、窓際のカーテン近くにいる時に、カーテンの裾から床へ降りてくる冷たい空気にゾクッと寒く感じたことはありませんか?
我が家では、少し手間はかかりましたが、床で少したるむくらいの長さに、厚手のカーテンの裾を縫い直しました。おかげで、窓際にいても寒く感じなくなりました。

厚手のカーテンや床まで届く長いカーテンも暖房時の省エネには効果的ですよ。
是非お試しください。
換気もお忘れなく!

2008年12月1日月曜日

ワタミの電力使用量の「見える化」

多くの企業がCO2削減に取り組み、実績も上がっているようですが、オフィスやコンビニなどの業務部門、家庭部門では思うように進んでいないようですね。

そこで、来年4月から施工される「省エネ改正法」では、省エネが進まない業務・家庭部門での対策が強化されるようです。

これまで「事業所」単位で報告していたエネルギー使用量を、これからは複数の工場や事業場をまとめた「事業者単位(企業単位)」で管理するようになるため、各社、あの手この手で電力使用量を抑える努力を重ねているようですね。

外食事業のほか、介護や農業、宅配弁当などの事業も展開しているワタミグループでは、2004年8月から、電力使用量の“見える化”による省エネ対策を進めています。

外食部門293店舗に、空調や照明、給排気ファンの電力使用量をチェックするセンサーを設置し、モニタリングシステムを導入しました。
その結果、システム導入前と比較した2006年までの3年間の平均省エネ率は12%になるそうです。

こうしたデータをもとにした省エネ対策は、基本的に各店舗に任せられていているそうです。

きっと、このモニタリングシステムは、電力使用量の“見える化”だけでなく、従業員の人たちの省エネ努力の“見える化”にもなっているのでしょうね。

従業員の人たちの省エネ達成感・高い意識は、更なる省エネ目標へのモチベーションになり、それぞれの私生活での環境配慮にも生かされ、省エネへの意識改革の輪もどんどん広がっていくのでしょうね。

とってもワタミらしい「良い循環」ですね。
ワタミで忘年会もいいかもしれませんね。

ワタミ:http://www.watami.co.jp/shop/shop.html

2008年11月28日金曜日

エコ酒屋


冷えてきましね。熱燗の季節ですね。

お店の棚に並ぶお酒の数々、名前やラベルのデザインが凝っていて、どれも飲んでくださいと言っているような気がするのは私だけでしょうか。

そんな私ですが、飲むのもOK!お料理にもOK!ということで、紙パックのお酒を重宝しています。しかしながら、使いきって、いざ捨てるとなると、「この紙パック、捨てるのもったいない!」という思いが、いつも頭を過ぎります。

そこで、知ったのが「エコ酒屋」さんです。
「エコ酒屋宣言」をし、店頭に回収BOXを置いて酒パックや、アルミ付紙パックのリサイクル活動に取り組んでいる酒屋さんのことです。

酒パックは紙パックの約27%を占めているそうですが、内側をアルミでコーティングされた複雑な構造になっているためリサイクルが難しいとされてきました。最近では技術も向上し、牛乳パックと同様に上質の古紙原料としてリサイクル可能になっています。

この「エコ酒屋」、平成19年には、1道2府27県310店舗まで広がってきています。
ご近所に「エコ酒屋」さんがあるといいですね。

酒パックリサイクル促進協議会:http://www.r-kyokai.org/P.confer/P.c-top.html

2008年11月11日火曜日

電気の地産地消

「パナソニックが三洋電機を買収?」というニュースが流れたのは、つい10日程前でしたが、三洋電機の電池の技術は本当に高いのですね。

今朝の日経新聞に、
三洋電機は人が歩く際の振動で発電する小型部品(小型振動発電デバイス)を開発、歩数計を試作した。・・・・・
という内容の記事が載っていました。

振動力発電の研究は、2003年頃、動きや振動を電気エネルギーに変える発電機「発電床」の開発から始まりました。
2005年当時、体重約60kgの人が1秒間に2歩ずつ歩行した場合の発電量はわずか0.01Wだったのが、2006年には0.3W、2007年には0.7Wまで向上したそうです。

首都高速道路・中央環状線の荒川に架かる五色桜大橋のイルミネーションの一部には、首都高を走る車の振動エネルギーを発電床で電気エネルギーに変換した電力が利用されています。

振動エネルギーをどのようにして電気エネルギーに変換するのかについては、電気エネルギーを振動エネルギーに変換するスピーカーの原理を逆に利用したものと考えると分かりやすかもしれませんね。

普段は「あっ揺れてる・・・」と感じるだけだったものが電気になるのですから、振動力発電って素晴らしいですね。また、そこで発電した電気をそこで使うのですから、振動力発電はまさに電気の地産地消ですね。

三洋電機は、今後、自動車のドアを自動施錠するマスターキーなどへの小型振動発電デバイスの搭載を目指すそうです。

2008年9月19日金曜日

バイオマス発電事業

かれこれ15年程前でしょうか。開発途上国の子どもたちの様子を紹介したユニセフのビデオを見たときのことです。「子どもたちが、道に落ちている牛糞を、素手で拾い集め、壁などに貼り付けて乾燥させ、その乾いた牛糞を燃料に使う・・・・・」という内容に、衝撃を受けたことを覚えています。

落ちついて考えてみれば、家畜の排泄物には草や藁なども多く混ざっていますから、立派に燃料として成り立つのですね。

日本では、牛、豚、鶏などの排泄物は、1999年に制定された「家畜ふん尿管理・リサイクル法」によって管理基準が設定され、利用促進が図られています。

北海道内では、家畜の糞尿や生ゴミなどの有機性廃棄物を、メタン発酵させ、得られたバイオガスを、発電機やボイラーなどによって電力や熱などのエネルギーとして回収する、バイオガスプラントがいくつか稼動しているそうです。
農場1軒単位で使用できるコンパクトなプラントは、まさに、農場内のバイオマス発電所ですね。

バイオマスは、家畜排泄物や生ゴミ、木くずなどの動植物から生まれた再生可能な有機性資源のことです。森林の多いヨーロッパでは、折れた木・枝、剪定の際に発生する枝の切れ端などの森林バイオマスを利用しての発電事業も行われています。

世界銀行は、日本の機関投資家などに、排出量価格に連動した債券を発行。調達した資金はアジアでのバイオマス発電事業に振り向けるそうです。

2008年9月18日木曜日

太陽電池の種類と特徴

住宅向けの太陽光発電を導入するための補助金制度が復活、経済産業省は今後3~5年で住宅用発電システムの価格を半額にする目標のようです。

最近はいろいろな太陽電池が出てきているようですが、どのような太陽電池がいいのでしょうか?ひとことで太陽電池といっても素材もいろいろあるようですね。ちょっと調べてみました。

太陽電池、初めて作られたものは「単結晶シリコン」という素材を使ったものでした。1950年代のことです。トランジスタもこの時代に発明されています。

1998年頃から、主役は「多結晶シリコン」に移っていきました。その特徴は何といっても単結晶に比べて安い製造コストです。シャープ、京セラ、三菱などのメーカーが生産し、もっともポピュラーな太陽電池となっています。

「アモルファスシリコン」は、単結晶、多結晶シリコンとは異なり、結晶を作りません。薄膜化が可能、加工がしやすく、安価に量産ができ、一度に大面積の太陽電池を作りやすいことから、大きく期待されています。

「HIT太陽電池」は、単結晶シリコンとアモルファスシリコンを積層形成した、新しいタイプの太陽電池です。気温の高い地域では発電効率が低下しがちな結晶系シリコンの太陽電池に比べ、高温時でも発電効率が比較的高いという特徴があります。

新しい素材を用いた「化合物系太陽電池」があります。材料に主流のシリコンを使わず、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)などの金属化合物を採用しています。そのひとつに、自動車メーカーのホンダの製品「CIGS化合物太陽電池」があります。極薄にでき、影の影響を受けにくいという特徴がありますが、資源量が少なく製造コストが高くなる懸念もあります。

2008年9月16日火曜日

「藻」から「石油」を生産

私たちが日常使っている食用油、菜種油・大豆油・コーンオイルなどをつくる「油糧植物」の種子にはたくさんの油が含まれています。植物が発芽する時、すぐにエネルギーを取り出して、成長することができるように、エネルギーに変換しやすい油を種子に貯えているようです。

ところが、地球温暖化の防止に役立つことから、代替燃料の原料として、サトウキビやトウモロコシやアブラヤシなどの「油糧植物」の栽培が広まり、食糧価格の高騰や森林伐採など新たな問題を引き起こしています。森林面積が減少すれば、CO2の削減どころではありませんね。

そこで、今、注目されているのが藻類です。
日本では、1970年の石油危機後、石油生産に藻類の利用が検討され、大規模な研究開発プロジェクトもあったそうですが・・・

現在、採掘されている石油も生物が作り出したものと考えられています。油田が集中する中東エリアでは、太古に遠浅の海が広がり、藻類が長期間、大量に生息していたことが分かっています。

藻類には脂肪や炭化水素を大量に生産する種が多く、根こそぎ採らずに、上手く残すように採取すれば、何度でも油を取れるうえ、栽培の手間は格段に軽いそうです。

そして、何よりも、藻類の油分生産能力は、陸上植物である作物に比べて微細藻の収量は単位面積あたり年間で数十倍から数百倍になると言われているのです。

2006年からアメリカのベンチャー企業が藻類の大量栽培を始めています。
2007年から日本の化学メーカー帝人は藻類を開発するオランダのバイオベンチャーと共同研究を始めました。そのほかにも、多くの会社が藻類の研究をはじめていると言われています。

国内では、「カイワレ大根」の大手業者三和農林が水耕栽培の冬季暖房用の燃料を調達するために、藻類の培養タンクを設置、デンソーもCO2を吸収しながら作れるバイオ燃料に着目、研究を開始しました。

石油輸入大国から脱却できる日が早く来るといいですね。

2008年9月12日金曜日

トレーサビリティ

トレーサビリティは、食品がいつ・どこで・どのように作られ、どのような経路で流通されたかなどの生産履歴を明らかにする制度です。
以前このブログの「近代マグロ」でも少し触れたことがありましたが、trace(トレース:追跡)とability(アビリティ:できること)の2つの言葉を組み合わせたものです。

社会的に普及が期待されているトレーサビリティシステムですが、現在、日本において法律で義務付けされているのは国産牛肉のみです。(国産牛肉というのは、国内で生まれたすべての牛と生体で輸入された牛、及び内臓肉並びに挽肉を除いた国産牛肉のことで、輸入牛肉は対象外となっています。)

牛肉の場合には、BSEの発生に対応して、2003年、牛肉トレーサビリティ法が成立しました。すべての牛には出生時に個体識別番号が付けられ、インターネット検索でも牛の履歴が分かるようになっています。2004年には店頭で販売される牛肉すべてに、識別番号を付けることが義務化されました。

青果物、鶏卵、貝類(カキ・ホタテ)などのトレーサビリティについては、2004年に、農林水産省が、「食品のトレーサビリティシステムの構築に向けた考え方」を作成、これらを基礎として、品目別ガイドラインの作成を進めているそうです。

消費者としては、青果物などでは、流通経路のほかに、どこの誰が、どのような農薬を使って、どのように栽培したかなどの情報も欲しいですね。

最近、偽装表示事件など、食品の信頼を揺るがせる問題がたびたび起こっています。そのため、生産・流通の履歴が明確にされた、安全で信頼性の高い食品が今まで以上に求められるようになってきています。

近代マグロ
http://thinking-eco.blogspot.com/2008/04/blog-post_03.html

2008年9月9日火曜日

炭酸水で肥料代半減

今朝、炭酸水を利用して肥料を半減させる栽培方法を考案というニュースを見ました。
高知県の雨森さんが考えられたのですが、資源価格の高騰で肥料の値段も上昇する中、画期的な農法として注目を集めているそうです。

炭酸水は、圧力を加えて、炭酸ガスを溶かしたものです。CO2が溶けているのですね。
からだの老廃物を排出し、疲労回復につながることから、スポーツ選手にも愛飲されているそうです。

では、土壌では炭酸水は・・・・・
ほうれん草やレタスなどの例外はありますが、多くの作物は、pH6.0~pH6.5の弱酸性の土が生育に適しているそうです。酸性が強くなりすぎると、必要な栄養分を十分に吸収できなくなるそうです。また、石灰を散布しすぎたり、ハウス内だったりすると、アルカリ性土壌になることがあり、改良が必要だそうです。

雨森さんは、2005年から、土壌中のpHによって肥料の吸収量が違うことに注目、研究し、最適な状態を保てば肥料を減らせると考えました。
そこでpHを下げる作用がある炭酸水を思い付いたそうです。

通常、土壌はマイナスの電気を多く持ち、肥料の成分であるカルシウム、カリウムなどは〔Ca2+〕、〔K+〕のようなプラスの電気を持っていて、土壌のマイナスの電気が肥料成分のプラスの電気を吸着保持しているそうです。雨によって、肥料の成分が簡単に流れてしまわないのはこういう理由ですね。

この土壌のマイナスの電気と肥料成分のプラスの電気の割合は、土壌のpHと深い関係があり、プラスの電気の割合が大きくなるほど、土壌のpHも高くなるそうです。

そこで、炭酸水の登場です。
炭酸中の水素イオン(H+)が、土壌のマイナスの電気が吸着保持されている肥料成分のカルシウム〔Ca2+〕やカリウム〔K+〕などと置き換わって吸着されるのです。その結果、カルシウム〔Ca2+〕やカリウム〔K+〕は流出し、pHが下がるのです。

雨森さんは、約3年かけて実用化にたどり着いたそうです。
肥料代は10アール当たり約25万円で、通常の半額以下に抑えることに成功しました。これからの普及が期待されます。

2008年9月7日日曜日

首都高速道路の「溶岩パネル」による壁面緑化

東京の年平均気温は、過去100年で3.0℃の上昇、他の大都市でも平均2.4℃上昇したそうです。気温上昇の原因には、地球温暖化やヒートアイランド現象が考えられます。

ヒートアイランド現象の原因としては、ビルや自動車からの排熱、アスファルト舗装や建物表面の蓄熱、建ち並ぶ高層ビルによる微風化などが考えられます。特に夏場は、空調の使用が増え、その排熱でヒートアイランド現象が更に進行します。

そこで、東京都では、ヒートアイランドを招くさまざま原因に応じた対策を行うとともに、民間と協働で、新素材・新技術を積極的に導入した取り組みを行っています。

緑化事業もその一つです。首都高速道路では、人と環境に優しく快適なハイウェイを創造する「首都高から始まる東京緑化計画・グリーンでゆこう!」を積極的に推進しています。

そこでの緑化に一役も二役も買っているのが「溶岩パネル」です。

溶岩には噴火のときにできた多数の気孔や気泡があります。そのため、他の天然石に比べて、水や空気を吸収しやすく、湿気を保ちやすく、さまざまな微生物などが暮らしやすいという特徴があります。また音を吸収する性質もあります。

これらの溶岩の性質を生かして開発されたのが「溶岩パネル」です。
住宅や道路脇の壁などの無機質なコンクリートも、「溶岩パネル」を覆うことで、微生物が生育し、コケなどの緑の植物で覆われ、昆虫や小動物が生息する環境に生まれ変わります。CO2の吸収効果や断熱効果も生まれ、ヒートアイランド現象の緩和に役立ち、省エネにもつながります。

首都高速道路は、「溶岩パネル」の産みの親である日本ナチュロックの佐藤俊明さんと更に研究を進め、潅水などのメンテナンスを軽減する工夫を施した、次世代の緑化型遮音板として、また壁面緑化用としての「溶岩パネル」を開発、首都高の緑化を進めています。

2008年9月5日金曜日

自動車に関する環境ラベル(1)

国立環境研究所が2008年に発表しました「2006年家庭からのCO2排出量」では、「自動車から」排出されるCO2は30.3%、「照明・家電製品などから」排出されるCO2は30.1%を占め、わずかな差ですが、「自動車から」のCO2排出量が家庭の中でもっとも大きな割合を占めています。

自家用車の利用者は環境に配慮したエコドライブを心がけていますが、ハイブリッドカーをはじめ技術面での低燃費・低排ガス車の開発も進んでいます。

そして、国土交通省は、ラベリング制度を設けて、燃費性能の高い自動車の普及促進を図り、自動車の排出ガス性能に関する一般消費者の関心と理解を深めようとしています。

車体に貼付されているステッカーを目にすることがあると思います。参考までに、一部ご紹介します。

燃費基準達成ラベル
自動車の燃費性能を示すラベルのこと。
省エネ法(エネルギー使用の合理化に関する法律)に基づく燃費基準を達成しているもの、及び、同基準を5%以上上回る燃費性能を有するものの車体に貼付されます。

低排出ガス車認定ラベル
国土交通省の低排出ガス車認定制度に適合した自動車の車体に貼付されるラベル。
「平成12年(2000年)排出ガス規制」に対応した低排出ガス車であると認定を受けた自動車に表示される低排出ラベル。低減した値が大きくなると「☆」の数が増える 。

平成17年(2005年)排出ガス基準」よりも有害物質を75%以上低減させたガソリン乗用車等に表示されるラベル

2008年9月3日水曜日

カーボンオフセット協会

カーボンオフセットは、日常生活や経済活動で排出したCO2(カーボン)を森林などに吸収させることで「埋め合わせる」(オフセット)活動のことです。

ビジネスとしては、消費者が商品やサービスを買う際、排出枠の購入額を上乗せして支払い、企業が植林などの事業を行ってCO2などの温室効果ガスの削減を目指すといった手法が多いようです。

身近なものでは、カーボンオフセット年賀状、佐川急便の「CO2排出権付き飛脚宅配便」、大阪前田製菓の排出権付きお菓、JTBはカーボンオフセットによるCO2排出権付き海外旅行商品、セブン&アイホールディングのオリジナルエコバッグなどカーボンオフセット商品が続々と登場しています。

そのおかげで、消費者は、わずかな負担でCO2削減に貢献できるようになりました。

しかし、企業が説明通りに、資金を排出枠の購入に使っているのか否かの疑問がよぎることもあります。目に見えないオフセットの価値に疑問を持つ人も多いようです。現に、オフセットサービスで先行する英国では、排出量相殺のために利用者が支払った代金が、CO2の排出削減事業に適切に使われていなかったなどの不正も起こっているそうです。

そこで、排出枠を販売する企業(プロバイダー)9社が、カーボンオフセットの信頼性を確保するために、業界団体「カーボンオフセット協会」を設立しました。
これからは、共同でオフセットの仕組みの理解を促す活動をするほか、オフセットの指針を独自に定め、消費者の納得を得やすい仕組みづくりに取り組むということです。

エチゼンクラゲ

水槽でゆらゆらしているクラゲを見ていると心が癒されますね。
実は、この傘をひらひらさせながら漂うクラゲは、太古の昔から海を漂いながら、ずっと地球の進化を眺めてきた、とてもタフな生物のようです。

エチゼンクラゲはまさにタフなクラゲの代表格かもしれません。
水温の高いところでは盛んに増殖し、酸素の乏しい海にも強いことは、他のクラゲも同様ですが、エチゼンクラゲは、強烈な毒をもつこと、長さが5mにも達する触手が多くあること、触手の元にたくさんの口があり、多くの餌をすばやく食べることができることなどから成長が速いのです。
また、からだの1/4くらいまでの損傷なら復元可能で、船などの高い音を危険と察知することもできるとか。

ただ、カワハギやサバはクラゲを好み、イボダイもクラゲを餌にしているそうで、「敵なし」言うわけではないようですが・・・・・

発生時の稚クラゲの大きさはわずか3mm程です。それが成長しながら対馬暖流に乗って移動し、日本海にやってくる頃には、傘の直径が通常1m、ときに2mにも達し、重量も200kgを超えるそうです。

この漁師さんを悩ます巨大生物エチゼンクラゲの大増殖には、私たち人間の営みが大きく関わっているようです。
地球温暖化、海水温の上昇はクラゲにとって活動しやすい環境です。東シナ海での魚の乱獲は、クラゲの天敵である魚を減少させ、クラゲの増殖につながります。中国沿岸の急激な開発に伴う工業廃水や生活排水による富栄養化は、プランクトンの異常発生をまねき、海の低酸素化をまねき、魚には棲みづらい環境になりますが、クラゲには有利にはたらくでしょう。

こうなると、漁師さんだけの問題ではありません。エチゼンクラゲの駆除や利用法を考える事も重要ですが、東シナ海から日本海にかけて豊かな海を取り戻すために、海の汚染や魚の乱獲に関して、国境を越えた規制を行うことも重要でしょう!

2008年9月1日月曜日

エコ・アクション・ポイント

エコ・アクション・ポイントは、楽しみながらポイントを貯めて、地球温暖化STOPに貢献できる新しいポイントプログラムです。

温室効果ガス削減が至上命題になっていますが、家庭やオフィスなどの温室効果ガスの排出量は1990年比で約4割も増加しています。一般消費者の地球温暖化問題についての認識は高まっていますが、温暖化対策に積極的に行動を起こしている人はわずかで、CO2排出量の増加傾向になかなか歯止めがかからない現状があります。

そこで、環境省は、身近でわかりやすい形でCO2削減への取り組みを促すために、モデル事業「エコ・アクション・ポイント事業」を推進、7月から北海道で先行実施しています。
環境省は、このモデル事業の成果を踏まえ、平成21年度からの本格展開を図ることを目指しています。

「エコ・アクション・ポイント」では、地球温暖化対策型商品やサービスを購入すると、エコポイントが発行され、貯まったエコポイントはいろいろな商品と交換することができます。
と言っても、ポイントカードは発行されません。参加者が事前に会員登録をし、温室効果ガス削減の効果のある商品やサービスを購入した際に、その商品やサービスに添付されている「アクションナンバー」を携帯電話やパソコンから入力すると、その商品に登録されている「エコ・アクション・ポイント」がインターネット上で貯まっていく仕組みになっています。

りそな銀行は、10月から「エコ・アクション・ポイント」事業に、金融機関としては初めて参加します。紙を減らしてCO2排出量の削減につながることを実感してもらおうと、預金通帳を発行しない口座を開いた顧客にポイントを発行するそうです。

2008年8月22日金曜日

サンゴ礁の白化現象

熱帯や亜熱帯の海岸を縁取り、天然の防波堤として波をさえぎり、海岸を侵食から守っているサンゴ礁。サンゴ礁の海は、海洋面積全体の0.2%を占めるのみですが、海に生息する生きものの4分の1がサンゴ礁の自然に関わって生きているといわれています。

サンゴは、クラゲやイソギンチャクと同じ仲間の動物です。
今、白化が問題となっているのは、太陽光線の届かない深海にいる宝石サンゴではなく、浅い海でサンゴ礁を形成する造礁サンゴ(以下、サンゴ)です。

サンゴは、褐虫藻と呼ばれる藻類を体内に共生させ、褐虫藻が光合成によって作り出す栄養分を食べて成長します。サンゴ礁の美しい彩りは褐中藻の色の違いから生まれています。

ところが、何らかの環境ストレスにより褐虫藻が光合成回路に異常を来たした時、サンゴが褐虫藻を放出するため、サンゴの骨格の白い色が目立つようになります。この現象が「白化現象」です。

環境ストレスとして、高水温だけでなく、海水の酸性化、淡水や土砂の流入、強い光、これらのストレスの複合効果が考えられます。

環境が回復すれば褐虫藻を再び獲得して、サンゴは健全な状態に戻りますが、環境が回復せず白化が長く続くとサンゴは死んでしまうのです。

1997年から1998年にかけて、エルニーニョに伴う海水温の上昇により、全世界的な規模で白化現象が起き、多くのサンゴが死んでしまいました。

2008年は、国際サンゴ礁年です。サンゴ礁の保全は、海の環境保全の大きなテーマの一つです。大勢の人にサンゴ礁についての理解を深めてもらうための活動が、各国で行なわれます。

2008年8月20日水曜日

バーチャルウォーター(2) 牛丼1杯に水2000リットルが必要!

私たちは、「湯水のごとく・・・」という例えがあるように、「水道の蛇口をひねればいつでも当たり前に『水』を手に入れることができる」と考えていませんか。

日本は、年平均降水量は主要先進国の中では4番目、世界平均の2倍です。ところが、1人当たり年降水総量でみると、世界の1人当たり年降水総量の3分の1程度です。再生可能な水資源量で考えると、世界平均の6分の1、世界では82番目だそうです。

では、なぜ、こんなにふんだんに水を使うことができるのでしょうか?それは、1つには、日本には自然の湖、農業用のため池、人工ダムなどがあるからです。2つ目には、食糧の約6割を国内で生産せずに、海外から輸入しているからです。

海外から食糧を輸入するということは、水を海外に依存していることです。上下水道が整備されていて、一見、日本の水資源は豊かに見えます。ところが、自国の水だけでその豊かさを賄っているわけではなく、見えないところで大量の水を輸入しているのです。

「バーチャルウォーター(VW)」「仮想水」の考え方ですね。最近では、食料の輸出入による世界の水資源への影響を示す指標として使われるようになってきているようです。

東京大学生産技術研究所の沖大幹教授は、牛丼やハンバーガーなどの食材のVWを試算しています。牛丼1杯を生産するのに必要なVWは約2000リットルだそうです。

オーストラリアは100年来といわれる旱魃に見舞われ、米国では穀物栽培に大量の地下水を利用してきたため、水不足や地盤沈下が問題となっています。
VWという考え方で水をとらえると、水資源の問題は、グローバルな視点での議論や行動が必要であることがわかりますね。

*仮想水計算機:
http://www.env.go.jp/water/virtual_water/kyouzai.html  
環境省が提供しているもので、フォームに入力するとバーチャルウォーター量が表示されます。
*バーチャルウォーターMENU:
http://v-water.jp/index.php?com=menu
*バーチャルウォーター(1):
http://thinking-eco.blogspot.com/2008/01/fao-aquastat-33.html

2008年8月19日火曜日

好適環境水の実用化が待たれます

テレビや新聞で大きく報道されています好適環境水。このところの燃料高による休漁、赤潮発生や海水温度上昇のニュースを耳にするたびに、好適環境水が頭をよぎります。

太古の海では今ほど海水は塩辛くなく、海水魚の祖先も淡水魚の祖先もいっしょに棲んでいたはずとか。
岡山理科大学専門学校の山本先生は、その太古の海を研究し、魚に必要なナトリウムやカリウムなどの数種の必須成分と濃度を特定、淡水魚と海水魚を一緒に飼育できる「不思議な水」好適環境水を開発なさったのです。

人間も魚も植物も、体液や細胞液の組成を一定に保つために、浸透圧の調整が不可欠です。好適環境水の中では浸透圧の調整の必要がなく、浸透圧が高い海水に棲む魚も浸透圧が低い淡水に棲む魚も、一緒に棲むことができるそうです。

好適環境水にはメリットがたくさんあります。
浸透圧調整のために消費していたエネルギーを成長のために使えるため、成長が速いのです。従来の陸上での養殖では人工海水代や冷暖房費にコストがかかっていましたが、必須成分を水に溶かすだけ好適環境水は人工海水に比べ60分の1のコストで済むそうです。病気にもかかりにくく、クスリに頼らずに飼育できるのは嬉しいことです。

山間部での養殖はすでに行われており、次は、ハマチやシマアジ、その先はマグロの養殖に挑戦するようですよ。
家庭菜園のごとく家庭で養殖というのも夢ではないかもしれませんね。

3月には試食会が行われ、フグやヒラメは美味しかったそうです。山本先生は、「これから養殖に適合する魚種を確かめ、今年度中に実用化に向け方向性を出したい」とおっしゃっておられます。実用化が待ち遠しいのですね。