2008年8月22日金曜日

サンゴ礁の白化現象

熱帯や亜熱帯の海岸を縁取り、天然の防波堤として波をさえぎり、海岸を侵食から守っているサンゴ礁。サンゴ礁の海は、海洋面積全体の0.2%を占めるのみですが、海に生息する生きものの4分の1がサンゴ礁の自然に関わって生きているといわれています。

サンゴは、クラゲやイソギンチャクと同じ仲間の動物です。
今、白化が問題となっているのは、太陽光線の届かない深海にいる宝石サンゴではなく、浅い海でサンゴ礁を形成する造礁サンゴ(以下、サンゴ)です。

サンゴは、褐虫藻と呼ばれる藻類を体内に共生させ、褐虫藻が光合成によって作り出す栄養分を食べて成長します。サンゴ礁の美しい彩りは褐中藻の色の違いから生まれています。

ところが、何らかの環境ストレスにより褐虫藻が光合成回路に異常を来たした時、サンゴが褐虫藻を放出するため、サンゴの骨格の白い色が目立つようになります。この現象が「白化現象」です。

環境ストレスとして、高水温だけでなく、海水の酸性化、淡水や土砂の流入、強い光、これらのストレスの複合効果が考えられます。

環境が回復すれば褐虫藻を再び獲得して、サンゴは健全な状態に戻りますが、環境が回復せず白化が長く続くとサンゴは死んでしまうのです。

1997年から1998年にかけて、エルニーニョに伴う海水温の上昇により、全世界的な規模で白化現象が起き、多くのサンゴが死んでしまいました。

2008年は、国際サンゴ礁年です。サンゴ礁の保全は、海の環境保全の大きなテーマの一つです。大勢の人にサンゴ礁についての理解を深めてもらうための活動が、各国で行なわれます。

2008年8月20日水曜日

バーチャルウォーター(2) 牛丼1杯に水2000リットルが必要!

私たちは、「湯水のごとく・・・」という例えがあるように、「水道の蛇口をひねればいつでも当たり前に『水』を手に入れることができる」と考えていませんか。

日本は、年平均降水量は主要先進国の中では4番目、世界平均の2倍です。ところが、1人当たり年降水総量でみると、世界の1人当たり年降水総量の3分の1程度です。再生可能な水資源量で考えると、世界平均の6分の1、世界では82番目だそうです。

では、なぜ、こんなにふんだんに水を使うことができるのでしょうか?それは、1つには、日本には自然の湖、農業用のため池、人工ダムなどがあるからです。2つ目には、食糧の約6割を国内で生産せずに、海外から輸入しているからです。

海外から食糧を輸入するということは、水を海外に依存していることです。上下水道が整備されていて、一見、日本の水資源は豊かに見えます。ところが、自国の水だけでその豊かさを賄っているわけではなく、見えないところで大量の水を輸入しているのです。

「バーチャルウォーター(VW)」「仮想水」の考え方ですね。最近では、食料の輸出入による世界の水資源への影響を示す指標として使われるようになってきているようです。

東京大学生産技術研究所の沖大幹教授は、牛丼やハンバーガーなどの食材のVWを試算しています。牛丼1杯を生産するのに必要なVWは約2000リットルだそうです。

オーストラリアは100年来といわれる旱魃に見舞われ、米国では穀物栽培に大量の地下水を利用してきたため、水不足や地盤沈下が問題となっています。
VWという考え方で水をとらえると、水資源の問題は、グローバルな視点での議論や行動が必要であることがわかりますね。

*仮想水計算機:
http://www.env.go.jp/water/virtual_water/kyouzai.html  
環境省が提供しているもので、フォームに入力するとバーチャルウォーター量が表示されます。
*バーチャルウォーターMENU:
http://v-water.jp/index.php?com=menu
*バーチャルウォーター(1):
http://thinking-eco.blogspot.com/2008/01/fao-aquastat-33.html

2008年8月19日火曜日

好適環境水の実用化が待たれます

テレビや新聞で大きく報道されています好適環境水。このところの燃料高による休漁、赤潮発生や海水温度上昇のニュースを耳にするたびに、好適環境水が頭をよぎります。

太古の海では今ほど海水は塩辛くなく、海水魚の祖先も淡水魚の祖先もいっしょに棲んでいたはずとか。
岡山理科大学専門学校の山本先生は、その太古の海を研究し、魚に必要なナトリウムやカリウムなどの数種の必須成分と濃度を特定、淡水魚と海水魚を一緒に飼育できる「不思議な水」好適環境水を開発なさったのです。

人間も魚も植物も、体液や細胞液の組成を一定に保つために、浸透圧の調整が不可欠です。好適環境水の中では浸透圧の調整の必要がなく、浸透圧が高い海水に棲む魚も浸透圧が低い淡水に棲む魚も、一緒に棲むことができるそうです。

好適環境水にはメリットがたくさんあります。
浸透圧調整のために消費していたエネルギーを成長のために使えるため、成長が速いのです。従来の陸上での養殖では人工海水代や冷暖房費にコストがかかっていましたが、必須成分を水に溶かすだけ好適環境水は人工海水に比べ60分の1のコストで済むそうです。病気にもかかりにくく、クスリに頼らずに飼育できるのは嬉しいことです。

山間部での養殖はすでに行われており、次は、ハマチやシマアジ、その先はマグロの養殖に挑戦するようですよ。
家庭菜園のごとく家庭で養殖というのも夢ではないかもしれませんね。

3月には試食会が行われ、フグやヒラメは美味しかったそうです。山本先生は、「これから養殖に適合する魚種を確かめ、今年度中に実用化に向け方向性を出したい」とおっしゃっておられます。実用化が待ち遠しいのですね。

2008年8月5日火曜日

雨水は 流せば洪水 溜めれば資源

明日6日、全国初の産学官の連携組織「雨水ネットワーク会議」が設立されます。設立を主導する墨田区は雨水利用の先進的な自治体として知られています。

25年ほど前、墨田区の錦糸町や両国地区などでは、地表面のアスファルト化が原因のひとつと考えられる「都市型洪水」に悩まされていました。
墨田区の年間降雨量2000万トンは、区民が1年間に使う水道水の量と同じだそうです。そこで、雨水を貴重な水資源と捕らえ、「雨を流さずに溜める仕組み」を作ることを考えたそうです。

折りしも、両国に新国技館を作る計画が進行中で、国技館の屋根に降る雨を溜め、冷房やトイレの水に使うことを日本相撲協会に提案、説得し、1000トンの容量の雨水タンクを設置しました。理論上は、相撲興行時に必要な水の必要な水の70%を賄え、洪水防止にも役立っているそうです。

この雨水利用の推進者は、墨田区の環境保全課環境啓発主査の村瀬誠さんです。村瀬さんは、海外では通称「雨水博士(Dr.Rainwater)」として知られ、NPO法人「雨水市民の会」事務局長や国際水協会雨水利用専門グループ副座長も務めておられます。

NPO法人「雨水市民の会」は、バングラデシュで、雨水を安全な飲み水として活用してもらうために、天水「Sky water」プロジェクを行っています。地域のNGOと連携して安価な雨水タンクを開発、マイクロクレジットを活用して、希望する家庭に設置しているそうです。バングラデシュには、井戸を掘っても地下水が有害な砒素や塩分で汚染されていて、安全な飲み水を確保できない人がいます。現地の人にとって、雨水は「Sweet water」だそうです。塩分の入った水に慣れた人にとって、雨水は甘く感じるのですね。

現在、日本でもっとも規模が大きいのは福岡ドームの雨水タンクです。韓国ソウルやドイツのサッカースタジアム、北京オリンピックの施設でも雨水利用が導入されているそうです。

気候変動の影響により洪水や渇水の頻発が予測されています。雨水は「流せば洪水溜めれば資源」です。雨水を有効利用するためにも、雨水タンクの設置などが社会システムに組み込まれるといいですね。

2008年8月4日月曜日

農作物に温暖化の影響じわり

オーストラリアでは、2006年の大干ばつで小麦の生産量が大きく減少し、輸出量も約3分の2に減少、輸出価格は上昇しました。そのため、小麦粉を始め、パン、うどん、パスタが大きく値上がりし、私たちの生活に大きな影響を与えています。

日本でも温暖化の影響が懸念されていましたが、日経新聞によりますと、47都道府県の農業関係試験研究機関を対象に実施した調査では、コメやリンゴ・ミカンなどの果物に、地球温暖化の影響とみられる被害が広がっていることがわかりました。

とりわけ、コメの品質低下が西日本を中心に深刻化し、コメ粒が白濁する現象は37府県で発生していることがわかりました。コメの場合は出穂後20日間の平均気温が26~27℃を超えると急激に玄米が白濁するそうです。
コメ粒の白濁現象は、収穫量の減少や品質低下につながるため、多くの機関が高温に強い品種の開発に着手しています。
九州沖縄縄農業研究センターは、高温でも白濁の少ない品種『にこまる』を開発、長崎県や大分県で作付けを本格化しています。また、熊本県は、今年、草丈が短く台風にも強い『くまさんの力』を品種登録したそうです。

果物でもさまざまな影響が報告されています。
果物は樹木になりますから、気温に合わせて種を蒔く時期を変えるわけにもいかず、新たに植えて、根付いたとしても、収穫まで時間がかかります。それだけに早く手を打つ必要があります。
関東地方では南国特産果物の栽培研究が始まっているそうです。

温暖化によって、今まで食べていたお米の銘柄や、果実の名産地などが、様変わりしていくのでしょうね

人工降雨 オリンピック開会式は晴天に!?

開発途上国の人口増加や経済発展による水需要の拡大、地球暖化による異常気象の頻発、水資源への影響から、水不足への関心が高まっています。

そんな中、人工的に雨を降らせる「人工降雨」の技術に期待が集まっています。

人工降雨の最初の実験は1946年、ノーベル化学賞を受賞したこともあるアメリカ化学者・物理学者のアーヴィング・ラングミュアによって試みられました。今では,世界気象機関(WMO)に報告されたものだけでも約40 カ国で毎年100 件以上もの大きなプロジェクトが実施されています。

日本でも、1947年、九州電力の要請で九州大学が人工降雨の実験を行っています。1994年からの9年間は、首都圏の水瓶である利根川上流のダム周辺に十分な量の雪を安定して降らせる可能性を検討するために、越後山脈での人工降雪実験が行われ、この夏は、四国の水不足解消につなげるため、早明浦ダム周辺で人工降雨実験を実施しています。

人工降雨実験に特に熱心な国は中国とアメリカです。
中国では、農業用水など水資源を安定的に確保するために、1950年から中国全土で人工降雨事業に取り組んできました。

中国は、この人工降雨の技術を使い、オリンピック開会式当日の北京上空を晴天にする計画を立てているようです。もし、雨雲が開会式会場に近づいた場合には、雲が会場へ届く前に人工降雨として雨を降らせ、北京上空を晴天にするようです。

是非、開会式が「晴れの舞台」になって欲しいですね。

2008年8月2日土曜日

海水や泥水から飲料水をつくる逆浸透膜

「命をうばう水・命をくれる水」、日本では、水道の蛇口さえひねれば、安全で衛生的な水をいつでも手に入れることができますが、世界には安全な飲み水を飲めない人が11億人もいます。アフリカのマリ共和国の農村部では、3人に2人が沼や池などの水、人手で掘った浅い井戸の水を使用して生活をしています。

今、このような泥水でも逆浸透膜を通すことで、きれいな水が得られるのです。海水からも飲料水をつくることができます。
自衛隊は、災害派遣やPKO活動で、逆浸透膜浄水システムを使って、飲料水を供給しています。中東、シンガポールなどの水資源の乏しい地域では、豊富な海水を淡水化しています。

逆浸透膜の原理を簡単に説明しましょう。
私たちの髪の毛の太さは約10万ナノメートルです。ウィルスは約10ナノメートル、腎臓の病気のときに人工透析する膜は10ナノメートルくらいの目の粗さです。そして水の分子は0.2ナノメートルとさらに小さいのです。
逆浸透膜というのは、0.2ナノメートルの水と1ナノメートルの塩を分けることができる膜のことです。

                  

片側に真水、もう一方に食塩水を入れておくと、真水は自然に食塩水側へ移動し、同じ濃度になろうとします。この現象を浸透と言い、同じ濃度になろうとする力を浸透圧と言います。
これに対し、浸透圧より大きい圧力をかける事で、半透膜を通し、食塩水中の水分子だけを透過させることができます。通常の浸透現象と逆の働きをする事から「逆浸透」と言われ、このときに使用される半透膜が逆浸透膜です。

逆浸透膜について、日本は世界の65%のシェアを持っているそうです。技術開発によって膜の製造のコストを下げ、貧しい国でも導入できるようになるといいですね。

※1ナノメートルは1メートルの10億分の1です。
NEWater
http://blog.goo.ne.jp/thinking-eco/d/20080628
海水の淡水化
http://blog.goo.ne.jp/thinking-eco/d/20080325